【感想】山崎豊子「大地の子」-中国残留孤児という戦争の被害者-
こんにちは。こなびすです。
たまたまですが、終戦記念日も近いタイミングで読み終わったのもあり、戦争の悲惨さと被害者についてよくよく考えさせられました。
恥ずかしながら、中国残留孤児についても全く知らず、この小説を読んで初めてそのような戦争被害者もいるのだなと知りました。
7歳で中国に残された中国名「陸一心」の半生を描いた、全四巻の長編小説です。
内容(「BOOK」データベースより)
陸一心は敗戦直後に祖父と母を喪い、娘とは生き別れになった日本人戦争孤児である。日本人であるがゆえに、彼は文化大革命のリンチを受け、内蒙古の労働改造所に送られて、スパイの罪状で十五年の刑を宣告された。使役の日々の中で一心が思い起こすのは、養父・陸徳志の温情と、重病の自分を助けた看護婦・江月梅のことだった。
感想
長編すぎて何を書くか迷っています。
まず、日本が中国に侵略戦争を仕掛けて、満州を実質統治していたのは歴史で習った通りです。
その時に、日本から中国の開拓団として、何万人も中国に送られています。
中国に町や村から人を送り出すと、政府からその町村に補助金が出るため、村から何世帯とかそんな感じで中国に送られていたようです。
例によって、体のいい言葉を並べられて、開拓民も希望を抱きながら中国に送られるわけですね。で、待ってるのは凄惨な現実というわけです。
主人公の松本勝男(7歳)は、家族と共に満州に渡り、そこで、ソ連軍の虐殺に遭遇することから過酷な人生を歩むことになります。
目を覆うような地獄のような状況です。
家族を喪い、または生き別れ、言葉もわからない中国で一人残されるわけです。
7歳ですよ?
そして、敵国であった中国で、戦時直後の日本人の扱いはどんなものか想像できますか?
人に攫われ、売られ、買われた先は・・・。いい生活が待ってると思いますか?
ないですよね。。。
目も当てられません。
日々を生き延びるだけで精一杯で成長はするものの、「日本人の血が流れている」という一点で、彼を常に苦しめます。
周囲のいじめなんて生ぬるいものではないです。
成人してからも、文化大革命の波に翻弄されて、そこでもまた日本人であることのみで、逮捕され、奴隷同然の生活を余儀なくされます。
苦難の連続、どころではないです。苛烈過ぎる人生。
正直、彼の人生は辛過ぎて、私が彼なら自死を選んでいるんじゃないかと思います。
彼に陸一心と名付けてくれた慈悲深い義両親や、唯一とも言える親友、重要な局面で彼を救うことになる女性等、そんな中、数少ない味方とも言える人素晴らしい少数の人達が彼に手を差し伸べつつ、希望を持って生き抜くわけです。
彼の生き抜く姿に胸を打たれ、泣ける場面もあります。
前半を踏まえた上で、後半は、中国共産党等の政府も絡んだ国家プロジェクトの話になったり、テーマが壮大過ぎて、もう何から何まで重厚です。
今現在でも日本にいい感情を持っていない中国人の方も多いですが、中国人の日本人に対する思想の根底みたいなものも少し理解できた気もします。
何より、実際に中国で陸一心と同じように中国に取り残された人が存在することは本当に悲しいですし、結果的にその人達を見捨てた日本政府に対しては怒りしかありません。
戦争はダメです。戦時中に人の命を奪うのみならず、その後にも多くの被害者を残します。いいことは何一つありません。
戦争の悲劇を忘れずに、残留孤児について知る意味でも多くの人に読んでいただきたい作品です。