こなびすのピクニック

書評、体験談、考えの発信など  -No matter what the weather, we are together-

【感想】東野圭吾『秘密』-切な過ぎる名作小説-

こんにちは。こなびすです。

 

今日は東野圭吾さんの「秘密」の感想を書きます。

 

この小説、20年以上前の東野作品ですが、めっちゃ好きなんです。

 

読書が趣味と言えるくらいに小説を読み始めて15年以上経ち、これまで余裕で1,000冊以上読んでいますが、今でも私のベスト10に入っている作品です。

 

読書って読むタイミングによって感じることが違ってたりしますが、最近再読して、やっぱり最高だと認識しました。

 

 

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内容(「BOOK」データベースより)

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった

 

 

感想

面白い作品は昔のものだろうと何だろうと面白いですよね。

ここまでの小説に出会えることはなかなか無いと断言できますが、こういう出会いがあるから読書はやめられません。

 

一生のうちで出会えてよかったと思える小説の一つです。

 

娘の身体に妻が宿る。超常現象的なSFっぽい設定ですね。元々設定が面白い小説って好きなんですが、この小説はとにかく心理描写が見事でリアリティが凄いです。

 

事故が起こった結果として、妻が娘の身体に宿り、実質的には彼女は若返って人生をやり直すことになったということ。

そうすると、一緒に生活する中で二人の関係性はどうなるか。

 

娘が亡くなったことを悲しむ状況でもありますが、見た目は娘である最愛の妻がいます。

 

妻が成長していくにつれ、周りから見れば娘に他ならない妻との将来はどうなるのかという不安、再度得ることができた新しい人生を悔いが無いものにしようとしている妻に対する妬み、置いて行かれたような孤独感、そして、焦燥感。

 

様々な感情が主人公の平介の中で渦巻きます。

若干度が過ぎると思えなくもない描写もありますが、自分が同様の立場だったら、と考えると同じような感情が生じるだろうなって思います。

 

転落事故で妻だけでも生き残ったことは間違いなく幸運ではあったけど、2人で生活していく中での平介の気持ちを考えると胸が苦しくなります。

心が揺さぶられるシーンがいくつもあります。

 

周りにも相談できない中で、秘密を持つ2人。幸せに生活しようとするものの、愛しているが故に衝突も繰り返します。

 

娘の身体に宿った直子にしても、「自分」として振る舞えない苦しみがあります。学校等では勿論ですが、例えば、自身の身内に対してもです。

両親に対しては、孫として接しないといけないんです。。。

その両親は無論、直子は亡くなったと認識しています。

周囲からは自分はこの世にいないものとして扱われ、その状況を受け入れざるを得ない、その悲しみは想像を絶すると思います。

 

2人の苦悩が切な過ぎです。。

 

その一方で、この小説が見事だと思うのは、バス転落事故に関係する人物達とも関わり合いがあり、それの原因追及部分も非常に読み応えがあります。

事故を起こした亡くなった運転手の遺族等、真相を追う中で、新たな事実、人間関係が都度浮かび上がってきます。

 

そして、物語の最後の「秘密」です。

泣けます。。

 

愛している相手が幸せになれる道。

その選択をするまでにどれほどに悩み覚悟を要したか。考えれば考えるほど心が震えます。

 

繰り返しになりますが名作だと思います。まだ読んでいない人が羨ましいです。

記憶を消して再度読んでみたい程です。

 

未読の方は是非読んでみてください!