【感想】桐野夏生 『OUT」 -犯罪小説の金字塔!-
こんにちは。こなびすです。
深夜の弁当工場で働く、度胸ありすぎる主婦達。
今回は桐野夏生の「OUT」について書きます。
登場人物は深夜の弁当工場で働く主婦達です。今の生活を抜け出したいと思いつつも、苦しい生活を余儀なくされている人たち。
パート仲間の一人が、ギャンブル好きで暴力も振るう最低で馬鹿な旦那を殺してしまいます。
そして、仲間に相談するわけです。どうしようかと。そういうしているうちに死体を隠すために解体することを決め、実際に決行します。
そこから更にあれよあれよと物語が展開していくのですが、運がいいのか悪いのか、最初は良さげな方向に進むものの、またまた意外な方向に転がっていきます。
犯罪がバレて警察に捕まるのか、友情に綻びが出て誰かが裏切るのか、新たな登場人物が現れて助けるのか、とか、いろいろ考えてしまうわけです。
そんなこんなしているうちに、第二の死体解体も請け負うはめになる。
精神状態がむちゃくちゃです。
先が気になってしょうがなく、上下巻を一気に読みました。
まず、主な登場人物が4人いるのですが、いずれも性格は勿論ですが、普段の生活や過去まで設定がしっかりしているため実際に知り合いにいるんじゃないかと錯覚するくらい、凄くリアリティがあります。
その中でも主人公の雅子。
旦那さんと子供もいる主婦なんですが、度胸がありすぎなんです。物怖じしないっていうレベルではない。それも彼女の過去が関わってるんですが、それにしてもです。
また、頭も異様に切れる。現状を打破しようと、周りも巻き込んで(多少強引なところはいくつもありますが)リーダーシップを発揮し、過酷な状況に立ち向かっていく姿はカッコいいとすら思えます。
サラリーマンの旦那さんもいて、持ち家もあり、生活には極端に困ってないため欲もそれほどない。
それでもいろいろなところに首を突っ込んでいくのはなぜなのか。そこは小説を読んでみてください。
彼女がいないとこの小説は成り立ってません。
一方、考えが浅く自分のことしか考えていない足を引っ張る仲間もいます。
誰から見ても可愛らしくて気立てもいい奥さんですが、旦那さんを殺してしまった仲間もいます。
親の介護で貧困に喘ぐ自らも老いつつある仲間もいます。
状況が絡みに絡んで予想をしなかった結末となります。
人が死ぬ系のミステリーはあまり好きではないのですが、本当に面白かったです。
ミステリー好きな方は間違いなく読んで損はありません。
私は決して裕福ではないですが、社会の底辺も垣間見えるこの物語を見て、多少なりともお金が稼げていて、毎日普通に生活できていて幸福だなとも改めて思いました。