【感想】垣谷美雨「老後の資金がありません」-老後の経済的不安軽減のためのヒントになるかも-
垣谷美雨さんの「老後の資金がありません」を読了したので感想を書きます。
いつものことながらネタバレ無しです。
まず、私と同年代30代以降であれば多少は老後について考えを巡らせたことがあるかと思います。
その中でも不安が大きいのはやはり経済的なことではないでしょうか?
次から次へとお金がかかるイベントが発生することによって、経済的に徐々に困窮していく50代の女性が主人公です。
悲観的なタイトルではありますが、この小説はユーモラスで軽快で読みやすいです。
また、現実的に起こりそうなことがストーリーとして展開され、状況や心理の描写もリアルであるため、実際に困っている人のヒントにもなり得るかもしれません。
文章も上手い作家さんですし、気軽に読める小説としてもおすすめです!
内容(「BOOK」データベースより)
後藤篤子は悩んでいた。娘が派手婚を予定しており、なんと600万円もかかるというのだ。折も折、夫の父が亡くなり、葬式代と姑の生活費の負担が発生、さらには夫婦ともに職を失い、1200万円の老後資金はみるみる減ってゆく。家族の諸事情に振り回されつつもやりくりする篤子の奮闘は報われるのか?
感想
降りかかる金難。
老後資金は1,200万円あるものの、立て続けに起こる支出で短期間に一気に余裕がなくなります。
更に追い打ちとして、夫も職を失うという正に泣きっ面に蜂状態です。
正直、経済的にきつい状況は辛いですよね。
貧すれば鈍するとも言います。
経済的基盤が揺らぐと、精神的にも余裕が無くなって、上手くいくものも上手くいかなくなります。
そんな中で、主婦の篤子は奮闘するのです。
地味でお金も無い娘のためということと、相手の面子のためにも地味婚を選ぶことができず、泣く泣く結婚式の費用も負担したり、舅の葬式で棺や祭壇を選ぶ際の描写などもリアルでした。
棺や祭壇の値段もピンキリであることも知れました。実際そんな状況になったら迷うだろうなぁと。
そのように、舅の家柄が老舗だったこともあり、金銭的な不安があってもケチることもできないというような苦渋の選択を迫られるシーンも多く、挙句に新婚の娘夫婦の問題や、夫が職を失うなど、悲惨な状況に振り回されます。
それでも、自身と家族のために奮闘するのです。
勇気を貰えます。
今まさに経済的にきつくなってきたという方には是非読んでいただきたいです。
また、個人的には姑がいいキャラしていてかなり好きです。
登場した時は老人ホームで大人しい感じだったのですが、その後の展開で意外な一面を見せていきます。
老舗を切り盛りしていただけあります。
とだけ書いておきます。
ストーリーの展開も面白いですよ。ちょっと予想から外れる方向に進んだりします。
話の行方が更に気になる展開で飽きずに読み切りました。
名作です。