【感想】桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』-最悪の結末は最初で記されています-
こんにちは。こなびすです。
今日は桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」のレビューを書きます。
親に虐待され、中学生の少女が殺されるという悲劇です。ネタバレか？って思われる方もいるかもしれませんが、最初のページで結末が書かれています。
あらすじ
主人公の山田なぎさ13歳と、彼の兄が「あるもの」を見つけるために山に登ります。
そう、あるものとは、最初のページに記載される、海野藻屑という少女の遺体です。
そこから回想となり、海野藻屑が転校してきた日から物語が始まります。
変わり者で周りからも疎まれる藻屑は、なぎさに近づき、少し変わった友情のようなものを育んでいきます。
主な登場人物
山田なぎさ：
13歳の少女で、昔に漁師の父親を嵐で亡くしています。
引きこもりの美形の兄とパートをしている母親との3人暮らしで、彼女は少しでも早く「実弾」（お金や仕事など、現実世界で役に立つものをそのように呼んでます）を得るために中学卒業後は自衛官になろうと考えています。
海野藻屑：
芸能人である海野雅愛の娘であり、一風変わった感じの女の子。足をひきずって歩き、自分を人魚と名乗る、美少女です。父親に日々虐待されていますが、父親のことは愛しています。
感想
きついです。心身の痛みに満ちています。。。
最初のページが新聞記事の抜粋となっており、
海野藻屑が惨殺されており、その無残な遺体を少女A（山田なぎさ）が山中で発見した旨が書かれています。
最後の解説にカタルシス云々が書かれているのですが、そんなもんは私は全く感じませんでした。読み終わったあとも、モヤモヤして、ただただ胸が痛いです。
最初に結末がわかっているだけに、心構えはできています。
ただ、そこに至るまでにも、痛ましい事件が起こったり、藻屑はなんてかわいそうな子なんだと同情の気持ちが沸々と湧いてきます。
そんな彼女も山田なぎさといる時だけは、楽しい素の自分を見せれるのかなと思ったり、生きて幸せを手に入れて欲しいなぁと思うのですが、やはり結末は変わらず。
ただ、彼女は日々虐待を受け、幸せではない、辛い日々を過ごしています。
周りも救ってあげて欲しかったし、間に合って欲しかったけど、死で救われたのかなという気もほんの少ししないでもないです。
どういう経緯でその結末となるのか、気になって1日で読み切ってしまいました。
話の展開然り、しっかり世界観の中に引き込まれ、読ませる力があります。
これは小説ですが、現実にも同様の虐待を受けている子供達も確かに存在しているということは悲しいです。
