【感想】奥田英朗「サウスバウンド」-元過激派の父親はこんな感じ-
こんにちは。こなびすです。
今日は奥田英朗さんの小説「サウスバウンド」について、感想を書きます。
小説は上下巻に渡る長編です。
主人公は平凡な小学生の二郎。
そして、熊のように体格が良く、元過激派の主人公の父親、一郎。
一郎は小説家を名乗り家でゴロゴロしてるだけ。
そして、やたら我が強く、肉体的にも強く、家族を翻弄します。
最初はこんな父親嫌やなぁと思いましたが、読み進めるうちに印象が変わってきました。
内容(「BOOK」データベースより)
小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうではないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。むかし、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族でどこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが…。型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。
感想
かなり面白かったです!
主人公の父親の一郎は、過激派ってこんな感じなのかなというイメージがそのまま具現化されたような人物です。
しかも一郎はそこらへんの元過激派ではなく、伝説の過激派として名が知れ渡っています。
国家権力を毛嫌いしており、好きでこの国に生まれたわけでもないと言う。
豪快で力も異常に強く、弁も立つという個性的な人間です。
家では寝てばかりでゴロゴロしているだけで、読んでいるだけでもうざい感じでしたが、冒頭にも書いたように読み終わった後では印象がガラッと変わっていました。
沖縄出身で、物語の後半で沖縄のとある島に移住するのですが、そこからが本領発揮って感じです。
一郎の生命力がとにかく凄い、この人ならどこでも生きていけるんだろうなと思います。
また、島を守る闘いにも身を投じることになるのですが、やたらカッコいいのです。
自分に非が無ければ守るべきもののためにとにかく闘う。負ける戦だろうがそんなものは関係ないのです。
彼は息子の一郎に説きます。
世の中には最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあると。
奴隷制度や公民権運動など今ある平等は心優しい権力者が与えたものではなく、人民が戦って勝ち得たものであると。
社会を変えるために戦うのだと。
熱いっす。
伝説の過激派。
あと、沖縄の人たちの伝統、困っている人がいれば助け合うという「ユイマール」が描写されているのですが、沖縄の人たちはこんなに温かいのかと思いました。
勿論人にもよるんでしょうけど、沖縄なら今もそんな人がたくさんいるんだろうなと想像したり。
とても人間らしく、いい伝統だなと。
温かい気持ちになりました。
最後に、主人公に全然触れてませんでしたが、主人公は優しい感じのいい子です(笑)
とにかく、父親がインパクト強過ぎました。