こなびすのピクニック

書評、体験談、考えの発信など  -No matter what the weather, we are together-

【感想】池井戸潤『民王』 -政治に興味無い人にこそ読んで欲しい政治エンタメ!-

こんにちは。こなびすです。

 

最近残業が多すぎて更新が滞っていました。。。

 

今日は池井戸潤の小説「民王」(たみおう)の感想です。

池井戸さんは数年前に世間で流行っていた半沢直樹シリーズの作者です。そのシリーズも好きで楽しく読んだのがきっかけでこの先品を手に取りました。

 

コメディ色も強くかなり面白かったです!

 

首相とその息子がメインの話で、閣僚や国会議員も多数登場します。

 

それだけ聞くと抵抗ある方も多そうですが、全然固くなく、笑える描写も多いです。

政治に抵抗がある人にこそ読んで欲しいと思いました。政治や政治家が身近に感じられる事間違いなしです。

 

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以下、引用です。

内容(「BOOK」データベースより)
内閣総理大臣の誤読が報じられるたび、どうしてそんなことが起きるのか不思議でなりませんでした。2009年当時のことです。1億2000万人も国民がいるのに、なんでそのリーダーが漢字を読み間違えるのか――。
ところがあるとき、私は唐突に、その理由がわかってしまったのです。いまでもよく覚えています。当時仕事場のあった渋谷某所の歩道橋を渡っていたとき、それは天啓のように閃いたのでした。
そうか、総理はきっと、どこかのバカ息子と脳波が入れ替わってしまったんだ――。
総理大臣がそんなことになっても、さすがに国防上の問題があって公にすることはできません。国際的な信用にも関わります。私も黙っていようと思いましたが、その後政権も交代し、もはや沈黙する意味はなくなりました。
そこで、小説という形で、事の真相を皆さんにお知らせしようと思い立って書いたのが、この『民王』です。
バカげていると思われるかもしれませんが、ここに書かれていることは“おそらく"すべて真実です。
いっておきますが、私にはとくに政治信条もなければ、当時の内閣総理大臣に対しても、好きとか嫌いとかいう感情もありません。
ただひとりの冷静で客観的な物書きとして、当時誰も気づかなかった真実を世の皆さんに知らしめるために、この小説を書いています。どうか、くだらないとかバカバカしいとか、いわないで頂きたい。そんなことは、書いている本人が一番よくわかっています。
その上で、まずはご一読頂きますよう、筆者からお願い申し上げます。
(この雑文に書かれていることは、すべてフィクションであり実在の人物とはなんら関係がありません。ちなみに、作者の脳波も正常であります。)
――本の話インタビュー「自著を語る」より

 

主な登場人物は、日本の内閣総理大臣である武藤泰山と、その大学生のドラ息子武藤翔です。

 

理由は伏せますが、国会会期中に、その二人の中身(脳波)が入れ替わってしまいます。

 

一国の首相の頭の中が毎日遊び倒している大学生になるわけです。相当やばい状態ですよね。。

漢字の読み間違い、問題発言も繰り返し、責任問題にも発展していきます。

 

逆に、大学生の息子になった首相である泰山は、翔の代わりにクラブでのパーティに行ったり、就職の面接に行ったりします。

 

泰山は支持率の急落を気にし、翔は自身の将来を気にし、それぞれ問題も積み重なっていくわけです。

 

泰山に至っては、還暦も近いおじさんから大学生に戻るのはさぞ嬉しいだろうなと思いつつ読んでました。

泰山はそもそも女性が好きなので、若い女性がいるパーティなどは喜んで出かけていったりする描写もあります。

 

そんな中で、二人は入れ替わった謎を追いかけていくことになります。

 

それをサポートする、泰山の盟友である官房長官である狩屋や、有能な秘書貝原、翔の友人等のキャラが立っています。

 

ちなみに、泰山は狩屋のことを「カリヤン」と呼び、狩屋は泰山のことを「泰ちゃん」と呼んでたりします。

 

実際の、固いイメージのある政治家もそんな風に親し気に呼びあったり、作中にあるようにクラブの女性がどうだとか、中学生レベルのしょうもない話をしたりしているのかなぁと思ったりしました。

 

二人が入れ替わり、支持率や政党の利益のことばかり気にしていた泰山は、翔の真っ直ぐな気持ちや情熱に触れて、若いころの国を良くしようと本気で考えた頃の情熱を取り戻していったり、翔は翔で父親の立派な姿も見ていくことになります。

 

笑い成分も多いですが、熱い小説でもあります。

 

私は政治に興味はそれほどないのですが、この小説を読んでかなり身近になりました。

単純に楽しく読めたのに加えて、そういう意味でも読んで良かったです。