【感想】綿矢りさ『私をくいとめて』-脳内の自分との会話は楽しそう!-
こんにちは。こなびすです。
今日は綿矢りささんの小説「私をくいとめて」のご紹介です。
アラサーのOLが主人公です。特にキャラが立っているわけでもなく、特別なスキルや状況があるわけではない、そこここにいそうな女性が描かれています。
ただ、普通の人と違うと思われるのは、彼女は自分の中の分身である「A」とよく会話をしています。あくまで自分の分身であるためAも完璧ではないけど、頼る気持ちもわかるっていう場面もちらほら出てきます。
女性の読書だったら更に共感できるのではないかなと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
黒田みつ子、もうすぐ33歳。悩みは頭の中の分身が解決してくれるし、一人で生き続けてゆくことになんの抵抗もない、と思っていた。でも、私やっぱりあの人のことが好きなのかな?同世代の繊細な気持ちの揺らぎを、たしかな筆致で描いた著者の真骨頂。
感想
芥川賞を受賞した同著者の「蹴りたい背中」は読んだことがあり、本屋でこの作品のサイン本を見つけたため買ってみました。
表紙が可愛らしく、圧倒的にターゲットは女性という感じがしますが、男性である私も楽しく読めました。
週末は趣味に時間を割き、仕事して疲れたらマッサージに行き、はたまた買い物に行ったり、歯医者に行ったり。
同僚の恋愛話を聞いてみたり、そんな日常の中で気になる人が出来たり。
日常ですよね。
現実にも大多数の女性がよく過ごしているようなシチュエーションの女性が描かれています。
ただ、一般的な人と異なるのは、主に困った時や一人で退屈している時など、冒頭に書いたように主人公のみつ子は脳内の分身とよく会話します。
みつ子はわりとのんびりした性格でほんわかしているけど、色々と悩みや不安も抱えています。
一方で、分身である「A」は機転もきくし、とても頼りになる存在です。恋愛のアドバイスなんかもするのです。
なぜかみつ子に対して敬語で話しするのですが、そういうところにも好感が持てます(笑)
「A」すごくいいキャラしています。
深層心理もわかっているので自分の考えがまとまらない時など、的確にアドバイスをしてくれたり、誰よりも自分のことをわかっているため最も効果的に褒めてくれたり励ましてもらえる時なんか、「A」みたいなのが自分の頭の中にいたらいいだろうなぁって思います。
みつ子にとって最高の味方です。
とはいえ、そこまで完全に別の人格みたいなのが出来ていると、完全に妄想のようなものなので、やばい気もしないでもないです。。
登場人物は少なく、話もシンプルで複雑ではないので安心して読めます。
手に汗握る展開があるわけでも、感動しすぎて号泣するような小説でもないです。
でも、小さく心を揺さぶられるようなそんなシーンがあります。
実写映画化もされるようで、映画も気になります。
みつ子とA、同僚や、登場する男性とのやり取りがどんな感じになるのか、ストーリーの波はゆるやかですが、映画も安心して観れそうなものになるんじゃないかと思います。
カフェ等でまったり読むのが合うような小説です。