こなびすのピクニック

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【感想】秋吉理香子『絶対正義』-融通の利かない正義にイライラしっ放し -

こんにちは。こなびすです。

 

今日は秋吉理香子さんの小説「絶対正義」の感想です。

 

正義を絶対的に信じ、実行する高規範子という名の人物が登場します。

 

例えば、法定速度が時速30kmの道路で、35kmで走行しただけで咎められるってどうでしょうか?意図的に違反しようとしていたわけでもないのにです。

本来は30kmを守るべきなのもわかりますが、でも…って感じです。

 

彼女の周囲の人物は彼女のおかげで、翻弄され、人生が悪い方向に向いていきます。

 

 

 

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 内容(「BOOK」データベースより)

由美子たち四人には、強烈な同級生がいた。正義だけで動く女・範子だ。彼女の正義感は異常で、法から逸れることを絶対に許さない。由美子たちも、やっと掴んだ夢や恋人との関係、家族までも壊されそうになり…。このままでは人生を滅茶苦茶にされてしまう!追い詰められた四人は範子を殺した。五年後、死んだはずの彼女から一通の招待状が届く!

 

 

感想

前述の範子に、正義を守る人間に終始イライラさせられました。

 

正義の味方ではあるのでしょうけど、人間らしい思いやりや優しさが無いとなんとムカつくことか。

 

彼女が言うこと、行うことは全て正しいです。

法律の通り、規則の通り。

 

間違ってはないです。

だから周りの人間も反論もできず、追い込まれていきます。

 

例えば、こんなエピソードもあります。

 

学校内で煙草を吸っていた生徒数名を、怖いけれども生徒から慕われている先生が見つけます。

 

詳細は端折りますが、生徒らを思いやりのある言葉で諭して、反省させて煙草だけ没収します。

 

温かいエピソードなのです。

 

生徒たちも反省しているし、本来ならめでたしめでたしです。

 

と思いきや、警察が校内に来ます。

 

目撃していた範子が電話したのです。

 

で、その様子を告げるわけです。

警察も事を大きくする必要もないと判断しますが、範子はそれも不服です。

 

後日、範子は教育委員会にその事実を告げ、学校側は法律違反を学校ぐるみで隠蔽したとして罪を追求され、結果、その先生だけでなく校長も学校を去ることになります。

 

注意した先生は退職間近のお爺さん先生で、そのおかげで退職金も受け取れずです。。

完全に同情します。

 

 

 

法律に対する意識の高さなど、範子は間違ってはいないのでしょう。

でも、全く優しくはないですよね。

 

そんな感じのエピソードが「多々」盛り込まれていて、彼女の友人だった人間達が彼女を憎んでいくことになります。

 

人の気持ちは全く考慮せず、法律第一。

タイミング云々も全く配慮無しのため、ほんの少しの間だけ見逃す、ということもしません。

常にボイスレコーダーやカメラも持ち歩き、裁判でも勝てるように、確実に罰するために、証拠もしっかり押さえます。

 

 

世の中、正しいことが人間にとって一番ではないなって考えさせられました。

 

ストーリー自体は、死んだはずの範子から招待状が届くところから始まるミステリーです。

彼女にどのように翻弄され、彼女をどのように殺害するに至ったか、はたまた、その彼女から招待状が届くとはどういうことか。

ストーリー展開も面白く、先が気になり引き込まれると思います。

 

秋吉さんの作品を読むのは初でしたが、面白かったので、他の作品も読んでみようと思いました。

 

正義に負の面があるのかわかりませんが、別の側面を見せられた感じがしました。

 

人間、正しさだけではダメです。

 優しさは必要ですね。

しみじみ思いました。