【感想】林真理子『白蓮れんれん』 -大正時代に命がけで貫いた愛-
こんにちは。こなびすです。
林真理子さんの「白蓮れんれん」の感想です。
大正時代に階級を超え、人妻が年下の恋人と駆け落ちした「白蓮事件」。よくある不倫の話かと思った方、現代のその辺の話とはスケールが違います。
愛する人のために全てを捨て命を懸けて愛を貫いた壮絶な物語です。
内容(「BOOK」データベースより)
あまりに名高い「白蓮事件」―、姦通罪のあった大正十年の人妻の恋の逃避行は命がけであった。天皇の従兄妹で華族で炭鉱王の妻、相手は若い熱血の社会実義の闘士。撃的な大ニュースだった。
感想
主人公は、柳原白蓮という大正時代の歌人であり、大正三大美人の1人です。
まず、現実にあった話であることに驚きます。
大正時代に人妻が不倫するというのは、現在でそれをするのとは全く話が異なります。
姦通罪ってご存知でしょうか?
結婚している男性が他の女性と関係を持っても何も罪に問われないのですが、結婚している女性が他の男性と関係を持ったら重罪となります。男性に圧倒的に都合のいい法律です。
たかだか100年程前にそんな法律もあったことにびっくりしましたし、なんて理不尽な世の中だったんだと思いました。
白蓮が嫁いだ先の伊藤家、旦那の伝右衛門は妾を何人も持ち子供も産ませている、炭鉱で成り上がった超金持ちの家柄でした。
旦那は白蓮が嫁いできてからも女性関係は好き放題です。
白蓮は政略結婚みたいな形で結婚するのですが、それでも希望を持っており、思い描いていた結婚生活とは全く異なる状況で、ひたすら忍耐を強いられます。
また、歌でも全国的に有名にもなります。
才能は勿論ですが、誰もが目を見張るような美人であることも有名になるのに大きく影響したような印象です。
当時の雑誌でもグラビアを飾ったりしていたのですが、テレビもインターネットも無い時代にそれだけ日本に名を馳せるって凄いですよね。
その天皇の従姉妹で、超有名で、あまつさえ重罪となる姦通罪もある時代にあって、出会った1人の青年と駆け落ちするんですよ。
そのハードルの高さは尋常じゃないですよね…。
しかも、その相手の青年は基本的に東京にいて、白蓮は九州に住んでいるんです。
新幹線もなければ、今みたいにスマホもないです。
どうやってやりとりするか?
手紙です。
史実として、約700通の手紙のやり取りをしたそうです。
(ちなみに、夫の伝右衛門は学が無かったため文字がほとんど読めないので、それは白蓮には幸運でした。)
その手紙でも、相手を想う恋の詩がたびたび詠まれていますし、同人誌に載せる詩も書かれています。
私は詩の良さは全くわからないのですが、それでも美しいと思えるような表現が沢山出てきます。
それらの詩を目にしてみて、当時歌人として有名になるだけの才能みたいなものはやはり並ではないなと思いました。
あとがきを読んで知ったのですが、著者の林真理子さんは、この本を執筆するにあたり、白蓮に関する実際の手紙や書物、白蓮の親戚の方にも話を聞いて完成させたとのことです。
凄まじく心血を注いだ傑作です。
手紙や台詞等は昔の文体で書かれていたり、読みやすい文章ではないにも関わらず、それでも先が気になってページを捲る手が止まりませんでした。
この本を読んで、世の中の不倫など何と温いものかと思いました。
不倫している人の中で彼女くらい覚悟がある人等、どの程度いるのでしょうかね。
最初は不遇な結婚生活を送ったものの、心から愛することができる青年と出会えて、白蓮は幸せだったんだろうなとも思います。
読み終わった後もいろいろと考えてしまい余韻が凄いです。
濃厚な恋愛物語を読みたい方にはめっちゃオススメできます。