【感想】瀬尾まいこ『幸福な食卓』 -家族の大切さに気づかせてくれる-
おはようございます。こなびすです。
家族の役割について考えさせられました。父親であるとか母親であるとか。
でも、実はそんなものはどうでもよくて、家族であるというだけで、かけがえがなく強固な繋がりがあるのだなぁと思わせてくれる小説でした。
あらすじ(「BOOK」データベースより)
佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。
主な登場人物
佐和子
本作の主人公。努力ができる子。明るくもなく暗くもなく、協調性があるイメージ。客観的に物事を見れるクールな子です。
直ちゃん(佐和子の兄)
元天才少年で尋常でないくらい頭がよく、スポーツもできます。大学に面白さを見いだせず、シンプルな道を好み、農業という職を選びます。
父親
元教師。父を辞めると宣言します。そこに至るまでの葛藤は相当なものであったと推測されます。
母親
別居して一人暮らししており、和菓子屋さんで働いています。
1人暮らしも気に入っており、別居しているものの家族仲は良好です。ただ、勿論別居に至った理由があります。
大浦君
佐和子のボーイフレンド。両親はわりとお金持ち。明るくこざっぱりしていて大らかな性格。結構ユーモラスです。
小林ヨシコ
兄の彼女。ガサツで大ざっぱな性格。そこそこ美人だが化粧が濃く、香水の匂いがきつい。直ちゃんの他にもボーイフレンドがいる。彼女自身、性格が悪いことは自覚はしています。
感想
ネタバレせずに感想書くのはなかなか難しいですが、読んで良かったです!
登場人物はみんな個性的で、設定だけでもっていく話かと思っていたら全くそうではなくて、家族の一つの形が綺麗に描かれていました。
登場人物は間違いなくみんな個性的ではあるけど、現実でも表面的には典型的な家族って感じでも、大きな悩みを抱えていたり、ちょっと普通じゃない過去があったり、ユニークな家族が案外一般的であるのかもなって思いました。
そういう意味で、物凄くリアルな家族についての物語であると思っています。
個人的にはお兄ちゃんのキャラが好きです。
勉強もスポーツもできるものの、ギターだけは下手だけどずっと続けていたり、鶏も育てているんですが(農業の延長で食用です)、鶏も凄く好きでクリスティーヌや末子っていう名前をつけてたりします。
何かに思いがとらわれているときは発言も適当なのですが、妹のことを本当に愛していて家族想いだったりするんです。
こんな兄がいる佐和子は幸せだろうなと思いました。
あと、突如登場した無視できない存在の小林ヨシコ。
彼女が登場したことで、この家族に対していい感じにスパイスを効かせてます。
そして、終盤が結構衝撃の展開になります。
まじか・・・。って感じで、正直、なんでそんな展開にすんのって少し思いました。
でも、結果的にはそれで正解なのかなって思いました。
ほのぼのしたストーリーと意外性だけでなく、多々考えさせられることも多くあります。
著者の瀬尾さんについて、稚拙な文章であるとの批判があることをふと思い出したのでついでに書きますが、私は全くそんな風には思ってません。
単に文章が上手なだけで、味気なく面白くもない作家もたくさんいる中で、瀬尾さんは読者に寄り添う文章で読みやすい文章を書ける素晴らしい作家だと思っています。
意図的かそうでないかは不明ですが、そのようにできる人ってそうそういないと思います。
(彼女の回し者でもなんでもないことを断っておきます(笑))
少し話が逸れましたが、楽しさも苦しさも家族みんなで共有するという、家族の一つの形を見せてもらえたいい小説だと思いました。