こなびすのピクニック

書評、体験談、考えの発信など  -No matter what the weather, we are together-

【感想】有川浩『フリーター、家を買う。』-鬱病になった母を救う家族の物語-

こんにちは。こなびすです。

 

家族が病気の人や、フリーター経験がある人には特に響くものがあると思います。

本日は、有川浩さんの「フリーター、家を買う。」の感想です!

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あらすじ

新卒でやっと入った会社に馴染めず、3ヶ月で辞め、その後、親の脛をかじりながらフリーターをして、バイトを転々としている主人公。

しかし、お母さんが重度の鬱病になります。

その原因は、主人公達が幼少の時から続く、近所の人達による陰湿ないじめです。

ずっと耐えていましたが、少しずつ少しずつ嫌な思いも蓄積していき、ついに心が折れてしまいました。

そのため、薬による治療を行いますが、根本的には解決しないため、環境を変えるしかなく、主人公は一念発起し、家を買うことを目標に、お金を貯め、一生懸命に働き始めます。

 

主な登場人物

武誠治:

本作の主人公。新卒で入ったそこそこの規模の会社を、社風がなじめないという理由で3ヶ月で退社します。バイトも気に入らなければ即辞める適当な性格です。

大学は3流大学を出ています。

(気にいらなければバイトをすぐやめるって、昔の私のようです・・・(笑))

 

武誠一:

主人公の父親。妻が鬱になったのは心が弱いからだという、プライドが高く、昭和気質な男の人です。

一流の企業で働き、経理をしています。(経理の鬼だそうです)

酒癖が悪く、近所からいじめられる原因もこの人によるところが大きいです。

 

 武寿美子:

主人公の母親。子供想いのお母さんです。近所のいじめを受けていても変わらず家族を守り続けるいいお母さんです。誠治がひきこもっていても、いつも優しく対応しますが、重度の鬱病が発症してしまいます。

 

亜矢子:

主人公の姉。医者に嫁いでいき、名古屋で暮らしています。

気が強く、頭が切れます。近所のいじめについても小さな頃から気づいており、家族を守ろうとしています。

頼りになり過ぎます。

 

感想

前情報ゼロで読み始めました。

タイトルだけ見て、なんとなくフリーターがお金を貯めて、将来に備えて家を買う話かなと思っていました。

 

有川浩さんの本なので軽い話(失礼?!)だと思って読み始めたのですが、読んでみると、鬱病も絡んでいる、なかなか深い話でした。

 

主人公は根っから腐った人間ではないので、母親が重度の鬱病となり、どうにかするしかないということで、真剣に就職活動も再開していきます。

 

就職活動中も貯金をしていきたい思いがあるため、給料がいい夜の工事現場の仕事を選びます。

肉体労働できつい状況で、そこでめちゃくちゃ頑張り、現場で働く最初はすぐ辞めるだろうと冷ややかな態度を取るおじさん達からも認められて、信頼を得て打ち解けていきます。

 

そして、おじさん達に家族のことを相談する件があるのですが、おじさん達も親身でめっちゃ優しく、グッときました。

 

主人公も三流とはいえ大学は出ているため、土方で働いている人を馬鹿にしているようなところもあったのですが、見方も変わってきて、人間的にも成長していきます。

 

序盤と後半では人が変わったくらい立派な男になるんです。

 

母を想う気持ちが起爆剤となって、頑固な父親とも衝突しながらも向き合い、変わっていく姿に心を打たれました。

後半の勤務先での同僚との関係性や、仕事内容も発展していくところは見ものです。

 

 

家族について考えさせられる話でしたが、有川浩さんらしく読みやすく、重い話の中にもユーモラスで軽快な描写も多くあります。

 

家族一体となって病気とも向き合う家族小説であり、若者の成長物語です。