【感想】伊坂幸太郎『終末のフール』-人類滅亡確定時、人は余生をどのように過ごすのか-
こんにちは。こなびすです。
久しぶりの更新です。
緊急事態宣言後に基本的に在宅勤務になったのですが、残業多めです…。
今日は伊坂幸太郎さんの「終末のフール」の感想を書きます。
コロナで暗いニュースばかりの中、人類の終末も可能性としてはあり得るのかなとも思い、地球滅亡の3年前が描かれているこの作品を再度読んでみようと思いました。
余命3年だとしたら、皆さんは残りの時間をどのように過ごしますか?
内容(「BOOK」データベースより)
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。
感想
この作品は短編集で、それぞれ主人公が異なりますが、舞台は同じ地球滅亡3年前の仙台での話です。
コロナで仮に世界の終末になったらこんな状況になるんだろうか、などと考えながら読んでました。
この作品では、小惑星の衝突により人類の滅亡が確定しています。
人類滅亡が確定したニュースが流れた直後は、世は大荒れに荒れ、殺人、暴力、強盗など含め、何でもありの世の中となります。
警察もほぼ機能しなくなります。
警察も職業の一つなので、やってられないと思う人も多いからですね。
その数年後の小康状態の間の話です。
絶望して自殺する人、一家心中を図る家族、ヤケになり暴力に走る人などがいる一方で、何も変わらず生活し、余生を出来るだけ幸せなものにしようとする人も多くいます。
政治家や警察などだけでなく、スーパーの店員さんも一部の使命感ある人だけが残っている状況なのです。
(今作に登場するスーパーの店長は自衛のために猟銃を手元に持っていたりします。食料品店などは真っ先に強奪の対象となったからです。)
あと数年で死ぬことがわかっているから、公務員等も含め、多くの人は働く必要もないと思っているわけですが、その気持ちもわからないでもないですよね。
そんな中でも、作中でインフラは稼働していましたが、現実ならそれも怪しいだろうし、どうなるんだろうなと思いました。
印象的だったのが、一人で変わらず鍛錬を積むキックボクサーのチャンピオンです。大きなタイトルマッチ前にそういう状況になったのですが、そのタイトルマッチの前と同様に状況に関わらず練習に練習を重ねています。
ストイックに練習する様がカッコ良かったです。
また、妻が妊娠して産むか産まないか悩む人や、新たな恋愛を求める人、大切な人を失った人、復讐を糧に生きてる人、など色んな人達が登場します。
世界の終末でも生き方は様々です。
私の場合は、事なかれ主義で争い事は嫌いなので、平穏無事に過ごしたいと思うだろうなと思います。
とはいえ、実際こんな状況になったら相当ジタバタして無駄にどこかに移動とかするかもなとも思いますが。
暗い世界の話ではありますが、必要以上に暗い雰囲気の作品でもありません。
というのは、伊坂さんの作品らしく個性的なキャラクターや軽快な会話も多く、終末の中でもゆるい雰囲気だったり、希望が見えるような感じもあるからです。
気軽に読めるし、人生とは何か、考えさせられる良い作品です。