【感想】重松清『トワイライト』-哀愁漂う中年の小説-
こんにちは。こなびすです。
今日は重松清さんの小説「トワイライト」について書きます。
大好きな小説です。
最初に読んだのは20代半ば、10年以上前ですが、謎な魅力がある小説でめっちゃ好きになったんです。
数ヶ月前にも読んでみたのですが、やはり当時と同じく面白く読めました。
あらすじ
小学校卒業の記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、同級生たちが再会します。小学校の時は無邪気に遊んでいた彼らも、40歳目前になり、問題を抱えていたり、厳しい現実を懸命に生きています。
当時は話題になったけど廃れていく一方のニュータウンで育ち、未来を夢見ていた子供時代の彼ら彼女らが、大人になり、彼らが再会した夏のお話です。
登場人物達は、子供が受験を控えているのにリストラで早期退職勧告を受けたり、夫婦関係が冷え切っていたり、ピークが過ぎた売れっ子予備校講師がいたり、順調とは言えない日々を生きています。
主な登場人物
■克也
本作の主人公で、昔から勉強ができて秀才だがスポーツは苦手で、眼鏡をかけていた。今は身長180cm近く。「のび太」というあだ名。1児の父。ソフトウェア会社勤務。
■徹夫
クラスでの番長的存在。喧嘩っ早いけど、友達想い。あだ名は「ジャイアン」。
■真理子
当時のクラスのマドンナ的存在。常に明るく、場の中心にいるタイプ。克也も密かに憧れていた。今は徹夫と結婚しており、2人の娘の母親。「しずかちゃん」
■淳子
物静かだが芯が強い雰囲気のある美人。独身。人気の売れっ子予備校講師として、TVや雑誌で取り上げられ、古文のプリンセスとして世間で一躍有名になった。
感想・紹介文
大人っていろいろ問題抱えてますよね。子供のことだったり、家族とのことだったり、金銭的な問題だったり、将来の不安だったり、病気のことだったり。
生きてる限り悩みは尽きないのですが、そのような悩みや現状の問題があって、ちょっといい感じの状況になるかも?と思ったら冷や水を浴びせられたり、現実にありそうなことが、物凄いリアリティをもって書かれています。
それと同時に、ところどころで心優しく思いやりに満ちた場面があったりします。
キャラ的には淳子が一番好きです。
周りからは冷たく受け取られがちなクールなタイプの女性なんですが、実は周りを一番気遣ってて一番優しいのです。
しかも、頭も切れる。
徹夫と真理子の子供達は、両親が不仲なので子供ながらにして厳しい現実を視ています。
悲惨な状況の中で、淳子が子供達が接するようになっていくんですが、子供達のことを親以上に想い、寄り添う姿が最高なんです。
この作品の魅力は上手く説明できないですが、間違いなく名作です。
ミステリーやサスペンスとも違うし、ジャンルは何かわかりません。
言うなれば、中年小説です。
登場人物も特殊能力を持っているわけでもないし、その辺にいそうな感じの人ばかりです。
私も登場人物達とほぼ同じような年齢なのですが、中年に差し掛かった哀愁のようなものを凄まじい筆力で書かれています。
まさに人生の夕暮れ、黄昏時「トワイライト」です。
ちなみにですが、20代の時にこの作品がきっかけで重松清にどハマりしました。
今本棚の重松作品の数を数えてみたのですが40冊以上ありました。
それはさておき、世間で目立ってる印象の無い本作ですが、重松作品が好きな人は勿論、とにかく読んでいただきたい作品です!