【感想】桐野夏生『バラカ』-ベビー・スークで売買された子の壮絶な人生と東日本大震災-
こんにちは。こなびすです。
見ていただき有難うございます。
今年も細々と読了後の小説の感想などを書いていきます。
今日は桐野夏生さんの「バラカ」です。
不運なことに紆余曲折があり、幼い時にベビー・スーク(子供が売買されている市場のことです。)に売られてしまったバラカという少女が主人公です。
かなり濃厚で深い話です。何から書いていいやら迷います。
内容(「BOOK」データベースより)
出版社勤務の沙羅は40歳を過ぎ、かつて妊娠中絶した相手の川島と再会。それ以来、子供が欲しくてたまらなくなってしまった。非合法のベビー・スークの存在を聞きつけ、友人・優子とドバイを訪ねた。そこで、少女「バラカ」を養女にしたが、全く懐いてくれない。さらに川島と出来婚をしていたが、夫との関係にも悩んでいた。そんな折、マグニチュード9の大地震が発生。各々の運命は大きく動き出す。
感想
話のスケールが大き過ぎて、まじでどこから何を書いていいかわかりません。。
さすが桐野さん、よくこんな話を上手いこと書けたなと思います。技量に感服しました。下手な作家が書いたら収拾つかなくなること間違い無しです。
背表紙に書いているレベルの内容を超ざっくり書くと、
- 日系ブラジル移民の間の子に生まれた「バラカ」、色々と経緯があって両親から引き離され幼少期にドバイのベビー・スークに売られる。
- 40過ぎのキャリアウーマンが子供欲しさに、噂で聞きつけたベビー・スークに行きバラカを買い、養女にする。
- 東日本大震災で福島の原発4基が全て爆発する。
- また色々あり、バラカは一人で警戒区域内に残され被爆する。
- 優しいボランティアの豊田老人に保護される。
- 反原発推進派、反対派の争いに巻き込まれていく。
これだけ見ても、もの凄い話の流れであると感じていただけると思います。
ただ、シナリオが凄く細かく練られていて、展開も早いし場面もどんどん切り替わりますが、いずれもリアリティがあります。
話の構成力が尋常ではありません。
原発の4工場が全て爆発している、現実にも有り得たかもしれない日本の姿。地震の後の凄惨な描写もでてきます。
当時は勿論毎日のように現地の報道がなされていましたが、今では被災者の報道はほとんど見られません。
やれ今年は東京でオリンピックだなんだと浮かれている一方で、被災して大事な人や家を失い、心に傷を負っている人が今でもたくさんいること、まだ仮設住宅暮らししている人などがいるということも改めて考えさせられました。
バラカは厳しい人生を歩むことになります。
敵も多くて、誰を信じていいのやらっていう状況になっていきます。
ただ、その中で彼女を支える人達がいる。
その人達の献身や、必死に生きようとする彼女の姿に胸を打たれます。
出会って良かったと思える名作です。是非読んでみてください。