【感想】辻村深月『ぼくのメジャースプーン』 -大事な幼なじみのために闘うことを決めた小学生のぼくの覚悟に泣けます-
こんにちは。こなびすです。
今日は辻村深月さんの「ぼくのメジャースプーン」の感想について書きます。
道徳的で考えさせられる話の展開になっていきます。罪とは何か、罰とは何か、正義とは何か悪とは何か。
「ぼく」の覚悟にグッときました。少しネタバレします。
あらすじ(「BOOK」データベースより)
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった―。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。
主な登場人物
ぼく
小学校四年生。神がかった不思議な力を持ってます。ふみちゃんを尊敬しており、彼女と友達であることを誇りに思ってます。
ふみちゃん
ぼくの同級生の女の子。外見的には分厚い眼鏡に、歯の矯正をしています。
本をたくさん読み知識が豊富でスポーツもでき、クラスのみんなから慕われている子です。責任感も誰より強い子です。
ある事件でショックのあまり話せなくなってしまいます。
秋先生
大学の先生でコメンテーターとしてテレビに出たりしてます。ぼくと同じ力を持っており、力に関する知識をぼくに教授します。いつも冷静で温厚な人です。
感想
最初にも書きましたが、少しネタバレありです。
小学校で凄惨な事件が起き、ぼくが大好きなふみちゃんが心を閉ざしてしまい、目はうつろとなり、口も聞けなくなってしまいます。
幸か不幸か、ぼくはある力を持っています。
「条件ゲーム提示能力」という能力です。
それは彼の親戚に稀に発現する能力です。
そして、同じ能力を持ち、その能力の先生となるのが秋先生という大学の教授です。
その能力は、簡単に言うと「○○をしなさい。さもなければ▲▲という状態になる。」と対象に言うことによって、○○という条件をクリアできなかった場合、確実▲▲になるという、相手を拘束する呪いのような力です。
使用するには条件があったり、使い方によっては効果が無かったりするのですが、そういう色々なケースを秋先生からぼくは教わることになります。
ふみちゃんが心を閉ざす原因を作った犯人にその能力を使用する前提で、力についての知識を得るために先生と会話を行います。
ストーリーとしてはシンプルで、
事件が起き、ふみちゃんが心を閉ざしてしまう。
特別な力のあるぼくが、その力の先生と会話を重ねる。
ふみちゃんのために力を犯人に行使することを決める。
犯人と直接対面する。
です。
ただ、神がかり的で強力な能力であるため、ぼく自身も苦悩するのですが、先生との会話の深さが半端ではありません。
犯人と向き合い、能力を使用する前提でどのような内容にするのがベストなのか。
人や動物の命の重さの違い、正義とは何か、悪とは何か、犯人をそのままにすればどうなるか、犯人に罰を与えればどうなるか、復習のメリット、デメリット、何が正しいのか、何が間違いなのか。
内容的に小学生を主人公に置くのはどうなのかという気もしないでもないですが、非常に興味深い話で、読み終えた後も考えさせられました。
正解が無いような、思考実験的な哲学的な話が好きな人は好きな物語だと思います。
決してさわやかな話ではないですが、救いはあります。
とても聡明で優し過ぎる、ぼくのキャラクターにも愛着が湧きます。
そして彼の覚悟と愛に涙すると思います。
ラストはどうなるのか是非ご自身で読んでみてください。