こなびすのピクニック

書評、体験談、考えの発信など  -No matter what the weather, we are together-

【感想】瀬尾まいこ『春、戻る』 -温かく、ほっとするお話-

こんにちは。こなびすです。

 

今日は瀬尾まいこさんの「春、戻る」のレビューです。

急に見知らぬ人があなたのお兄さんを名乗り現れたらどうしますか?

なんか不気味なミステリーみたいですが、全然そんなことはありません(笑)

 

 

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あらすじ

結婚直前、36歳の女性さくらの前に、急におにいさんを名乗る男性が現れます。

が、お兄さんというのに明らかに10歳以上年下であること。

そして、彼はさくらのことはよく知っており、徐々に彼女の生活に溶け込んでいきます。

 

主な登場人物

さくら:

36歳の女性。和菓子屋を営んでいる山田さんと結婚直前で、働いていた会社も辞めて和菓子屋の手伝いに行っています。お父さんは小さい時に亡くなっており、妹が一人います。

 

山田さん:

さくらの結婚相手。和菓子屋の長男で実家で働いている。おおらかな性格で体は大きい。優しい人。

 

おにいさん:

24歳でさくらのことを良く知っている青年。明るくよく笑い、よく喋って、人懐っこい性格で、誰からも好かれると自信を持っています。料理が上手いです。山田さんのことを団子屋と呼びます。

 

感想

ハートフルな話でした。心に春が戻ってきます。タイトルのとおりですね。

 

さくらの前に現れるお兄さんを名乗る青年。最初は目的がわからず、怪しいです。

 

さくらも勿論怪しんでいるのですが、どこか記憶の奥底に彼のことが引っかかっており、邪険扱うことができません。

 

というか、いきなり一緒にカフェに行ったり、悪い人じゃなさそうにしても、受け入れるの早すぎるやろうって、ちょっと心の中でツッコミました。

だって、アパートの前で待ち伏せされてたりするんですよ。

一般的には完全にストーカーっぽいですよね。。

 

彼は、初対面からさくらのことを「さくら」と呼び捨てにし、彼女の誕生日や嫌いなもの等も把握しています。

そして、なぜか自分の名前はのらりくらりと躱して名乗りません。

彼の目的や素性がわからないため、それを想像しながら読み進めることになります。

 

騙す意図があるのかとか、実はさくらを狙っているのかとか、いろいろ想像してました。 

 

でも、謎なお兄さんですが、結婚相手を見極めてやるから紹介しろだとか、和菓子屋にも頻繁に様子を見にいったり、デートに一緒についてきたりだとか、料理を教えてあげるだとか、さくらのことをお節介なくらいに、過剰なくらい気にかけます。

 

彼の行動や言動から、さくらのことを大切に思っていることが伝わるから、山田さんや、山田さんの両親や周りの人にもお兄さんとして受け入れられていきます。

周りの人もおおらか過ぎで、いい人達しか出てきません。

 

展開も会話も軽妙でテンポがよく、総じて温かいです。

 

そして、彼の素性が分かった時、心が春になります。

なんて優しい話なんでしょうか。彼らの兄妹としての関係性も微笑ましいです。

 

気軽に読めて温かい気持ちになれる良い小説です。これぞ瀬尾まいこっていう感じがしました。

 

良作です。