こなびすのピクニック

書評、体験談、考えの発信など  -No matter what the weather, we are together-

【感想】今村夏子『星の子』-両親がカルト宗教の信者だったら…。-

こんにちは。こなびすです。

 

今日は今村夏子さんの「星の子」の感想を書きます。

 

今村夏子さんのは「むらさきのスカートの女」で知りました。その作品も不思議な面白さがあったので本作も手に取ってみました。

 

もし自分の両親が、カルト宗教にはまっていたらこういう生活だったのかなと考えさせられました。

 

内容(「BOOK」データベースより)

ちひろは、中学3年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族のかたちを歪めていく…。野間文芸新人賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた著者の代表作。

 

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感想

今村さんの作品は不思議です。ふわふわしているのに何故か引き込まれる。その理由がはっきりしないけど、どこに着地するのだろうと先が気になって仕方ない。

 

本作もそういう作品です。

 

まず、両親がカルト宗教の信者でなくてよかったなと心から思いました。

 

読む楽しみが半減すると思いますので詳細は書きませんが、両親は生活の中で怪しい行動をしているのです。

 

家の中だけならまだしも、外でも同様ですので、周囲からは奇異な目で見られています。

 

でも、主人公の「ちひろ」にとっては、そういう両親に育てられ、生まれた時からその生活の中にいるわけです。なので、その生活が通常なんです。

 

ちひろは利口ですし、客観的には自分の家族が異常に映っているということは認識しています。

 

ちひろの両親がそのような感じなので、気がつけば、ちひろを心配する第三者の目線で読んでしまっていました。

 

少し異常な環境で過ごしている彼女には幸せになってほしいなと。

 

将来的に、彼女に彼氏なりが出来て、両親を紹介することになったりしたらと思うと、その彼氏がどう思うのかとかが心配です。。。姪っ子を案ずるような気持ちです。

 

ただ、ラストは希望がある終わり方(と私は感じました)でしたので、それは非常に良かったです。

 

設定が怪しい感じなので、全体的に暗いトーンを想像している方もおられるかもしれませんが、案外そうでもありません。

 

読みやすい作品です。

 

繰り返しになりますが不思議な魅力がある作品でした。

 

 

【感想】住野よる『君の膵臓をたべたい』-余命短い女子と男子の青春小説-

こんにちは。こなびすです。

 

前回に続き更新が滞っています。読書はしているのですが、最近忙し過ぎて・・・。

家に着くのが22時が定時くらいの勢いです。終電で帰ることもちらほら。定時って何ですか・・・?

 すみません、言い訳です!

 

それは置いておいて、今日は住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」の感想です。

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一時期流行っていたので、余命短い女子高生と男子高校生の話、という設定程度には知っていました。

ひと昔前に流行った「世界の中心で愛をさけぶ」みたいな話だろうなと想像しつつ、気になってはいたので買って読んでみました。

 

そして、設定からして明らかに涙を誘う系やろうなぁと思って構えて読んでいたけど、それでも泣かされました。。

ラストは衝撃的でした。。

 

恋人の余命が短いとか、設定だけ聞くと湿っぽい、なんかシリアスな話かなと思いますよね。残り少ない時間の中で2人で苦悩しながら濃厚な時間を過ごす、みたいな。

 

私もそうだろうなと思って読み始めたんですが、実際は結構コミカルで明るい雰囲気でした。

 

学園ヒエラルキーの上の方におり、誰からも人気がある桜良と、友達もおらず暗めの主人公。

主人公が桜良の余命が短いことを知ってしまうことによってできた彼らの関係。

一見、何の共通点も無さそうですが、その彼らの会話が非常にユーモラスで面白いんです。

 

今風の若者言葉で、明るい雰囲気。

テンポも非常に良くて、且つ、ちょっとした雑学も挟まれてることもあったり、読むのが楽しかったです。

 

で、彼らが恋人同士になるのかならないのか、どうなるのか。彼女の余命が短いこともわかっている状況で、読者としてもその行く末が気になるわけです。

 

そして、ラストはどうなるのか。

一気読みしました。

 

ベストセラーになったのもわかるくらい面白い小説でした。

 

重い話を敬遠している人でも、読んでみて欲しいなと思います。

 

本質は重いはずですし、泣けるのですが、二人の軽妙な会話が雰囲気を明るくしている部分も多く、爽やかささえ漂う小説でした。

 

青春です。

 

 

【感想】東野圭吾『恋のゴンドラ』-浮かれ気分の不倫旅行、ゲレンデが舞台-

こんにちは。こなびすです。

 

今日は東野圭吾さんの「恋のゴンドラ」について書きます。

 

東野さんの作品って真面目な推理小説が多いので、本作も恋愛系とはいえお堅い感じの愛憎劇かなと思ってたのですが、そうではありませんでした。

 

ブコメに近く、気軽に読めます。なので、小難しいのが苦手な方にもおススメできますし、面白かったです!

 

ただ、逆に、多くの東野圭吾作品の重厚な感じを期待している方や、浮気とか不倫に嫌悪感を持ってる人は読まない方がいいかもしれません。。。

 

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内容(「BOOK」データベースより)

都内で働く広太は、合コンで知り合った桃美とスノボ旅行へ。ところがゴンドラに同乗してきた女性グループの一人は、なんと同棲中の婚約者だった。ゴーグルとマスクで顔を隠し、果たして山頂までバレずに済むのか。やがて真冬のゲレンデを舞台に、幾人もの男女を巻き込み、衝撃の愛憎劇へと発展していく。文庫特別編「ニアミス」を収録。

 

主な登場人物

広太:リフォーム会社勤務。本命の彼女がいるが、隙あらば浮気しようと画策している。

 

美雪:広太と同棲中で結婚したいと思っている。同じリフォーム会社に勤務していて広太と出会う。なかなかの美人。

 

桃美:広太と合コンで出会って付き合い始める。肉感的な美人。デパートの化粧品売り場で働いている。性格も悪くない。

 

以下、シティホテル勤務の仲良しグループ。

 

日田:いい人ではあるが、いまいちぱっとしないため、彼女がなかなかできない。空気を読めないところがある。スノボではスピード狂。

 

水城:長身のイケメン。日田の同僚であり親友。プレイボーイで口が上手い。誰からも好かれている。友達想いでもある。

 

月村:日田達の後輩。

 

秋菜:ブライダル担当。しっかりしている女性。

 

麻穂:外見がぱっとしない。おっちょこちょい。

 

人との関係はネタバレになりそうなので、人物紹介はめっちゃ適当になりました。。

皆、30歳前後の男女です。

 

感想

帯に「貴女ならどんな罰を与えますか」とか書いてたのですが、ミステリーの印象が強い東野圭吾なので、登場人物が想像もつかないような罰を与えるんだろうか、なんか怖い、とか想像しながら買いました。。

 

でも、冒頭でも書いたのですが、気軽に読めるラブコメに近い感じでした(笑)

 

舞台は基本的にスキー場です。

 

会社の男女の同僚でスノボに行くとか、なかなかリア充で楽しそうなシチュエーションですよね。

 

スノボの用語とかも結構でてくるので、スノボ好きな人なら場面も明確にイメージできて、更に共感できて楽しめるかもしれません。

 

人間関係の中で、まじめな恋愛があったり、結婚を考えている人がいる一方で、遊ぶことしか考えてなかったり、なかなか恋人ができないと悩んでいたり、身近な人の恋愛話を聞いてるような面白さがあります。

 

スキー場で合コンをする「ゲレコン」の話があったり、サプライズでプロポーズを決行するために仲間で協力するシーンがあったり、ストーリーにも飽きさせない工夫があり、且つ、内容にも一捻り、二捻りあり、構成について、流石東野圭吾だなって感じです。

プロポーズの件も、思わずニヤけさせられたりします。

 

結果はどうなるかは読んでみてくださいね。

 

でも、やっぱり浮気や不倫を画策する話は面白いです(笑)

 

お泊りのための準備のあれこれ、パートナーの動向を気にしたり、友人に協力を仰いだり。

 

滑稽過ぎると思いつつ読んでました。

 

実際に浮気相手の女性と会っている時も、どういう風にいい感じに持っていこうかという、恋愛初期の浮ついた気分が上手いこと表現されています。

 

恋人がいようが、結婚相手がいようが、あわよくば別の女性と関係を持とうとする男心が巧みに描かれています。

 

非常に面白かったので、こういう軽いノリの恋愛系も東野さんにもっと書いて欲しいなと思いました。

 

【感想】芦沢央『罪の余白』 -妻に先立たれ、大事な一人娘も亡くした男はどうなってしまうのか-

こんにちは。こなびすです。

 

今日は芦沢央さんの「罪の余白」の感想を書きます。

愛する妻を失い、それだけでなく、残った大事な一人娘も失ってしまう。

 

自分がそんな状況になったらと考えると辛すぎます。。。

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以下、紹介文の引用です。 

 内容(「BOOK」データベースより)
どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう―。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたい、という思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生達の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!

 

感想

主人公の安藤は心理学者で大学で講師をしています。

 

娘が転落死した理由が何なのか、事故だったのか、それともいじめの事実があったのか、それを求めて安藤は真相を探っていきます。

 

一方で、加奈の転落死に関わる同級生の咲は、安藤に真相を知られてはならないと行動します。

咲は美少女で芸能界デビューする夢があります。

クラスのヒエラルキーのトップにいるような子で、狡猾と言えるほど非常に頭も良く、冷徹で超自己中心的でもあります。

真相が明るみに出るとその将来が閉ざされてしまうため必死になります。

 

安藤 vs 咲の構図となるのですが、他の登場人物もうまい具合に絡み、それぞれの心理描写が秀逸です。

 

そして、真相を求める中で娘の日記にたどり着いた彼に復讐心が宿ります。

 

彼は本来、とても優しく思いやりがある人です。

 

妻を病で亡くした後、生き甲斐は亡くなった一人娘の加奈だけでした。

表向きはいつも元気な女子高生。そんな彼女を心の支えにしていた彼に降りかかる悲劇。

憔悴仕切って、生きるのも半ば諦めたような彼の描写は読んでいて辛くなるほどのリアリティでした。

 

その彼が怒りを露わにする様子と、計画を進めている間は意識的にそれを表に出さず、冷静で、客観的に自分をコントロールする様子が恐ろしかったです。

 

そして、彼の意図を知った後の、自己保身しか考えていない咲がどのような行動を取るのか、どのようなラストになるのか、気になって一気読みしました。

 

個人的には、咲は自己中心的過ぎで、行無茶苦茶な行動するなぁという感想でした。

追い詰められたらそこまでするんかいっていう。。

 

実際にありえなくも無いリアリティがあって、ストーリーも登場人物も非常に深く考えられているなぁという印象です。

 

また、ストーリーに観賞用の魚のベタが話の中によく出てきます。

私はこの作品を読むまでベタを知りませんでした。

綺麗そうなので実物も見てみたいとも思いました!

 

【感想】池井戸潤『民王』 -政治に興味無い人にこそ読んで欲しい政治エンタメ!-

こんにちは。こなびすです。

 

最近残業が多すぎて更新が滞っていました。。。

 

今日は池井戸潤の小説「民王」(たみおう)の感想です。

池井戸さんは数年前に世間で流行っていた半沢直樹シリーズの作者です。そのシリーズも好きで楽しく読んだのがきっかけでこの先品を手に取りました。

 

コメディ色も強くかなり面白かったです!

 

首相とその息子がメインの話で、閣僚や国会議員も多数登場します。

 

それだけ聞くと抵抗ある方も多そうですが、全然固くなく、笑える描写も多いです。

政治に抵抗がある人にこそ読んで欲しいと思いました。政治や政治家が身近に感じられる事間違いなしです。

 

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以下、引用です。

内容(「BOOK」データベースより)
内閣総理大臣の誤読が報じられるたび、どうしてそんなことが起きるのか不思議でなりませんでした。2009年当時のことです。1億2000万人も国民がいるのに、なんでそのリーダーが漢字を読み間違えるのか――。
ところがあるとき、私は唐突に、その理由がわかってしまったのです。いまでもよく覚えています。当時仕事場のあった渋谷某所の歩道橋を渡っていたとき、それは天啓のように閃いたのでした。
そうか、総理はきっと、どこかのバカ息子と脳波が入れ替わってしまったんだ――。
総理大臣がそんなことになっても、さすがに国防上の問題があって公にすることはできません。国際的な信用にも関わります。私も黙っていようと思いましたが、その後政権も交代し、もはや沈黙する意味はなくなりました。
そこで、小説という形で、事の真相を皆さんにお知らせしようと思い立って書いたのが、この『民王』です。
バカげていると思われるかもしれませんが、ここに書かれていることは“おそらく"すべて真実です。
いっておきますが、私にはとくに政治信条もなければ、当時の内閣総理大臣に対しても、好きとか嫌いとかいう感情もありません。
ただひとりの冷静で客観的な物書きとして、当時誰も気づかなかった真実を世の皆さんに知らしめるために、この小説を書いています。どうか、くだらないとかバカバカしいとか、いわないで頂きたい。そんなことは、書いている本人が一番よくわかっています。
その上で、まずはご一読頂きますよう、筆者からお願い申し上げます。
(この雑文に書かれていることは、すべてフィクションであり実在の人物とはなんら関係がありません。ちなみに、作者の脳波も正常であります。)
――本の話インタビュー「自著を語る」より

 

主な登場人物は、日本の内閣総理大臣である武藤泰山と、その大学生のドラ息子武藤翔です。

 

理由は伏せますが、国会会期中に、その二人の中身(脳波)が入れ替わってしまいます。

 

一国の首相の頭の中が毎日遊び倒している大学生になるわけです。相当やばい状態ですよね。。

漢字の読み間違い、問題発言も繰り返し、責任問題にも発展していきます。

 

逆に、大学生の息子になった首相である泰山は、翔の代わりにクラブでのパーティに行ったり、就職の面接に行ったりします。

 

泰山は支持率の急落を気にし、翔は自身の将来を気にし、それぞれ問題も積み重なっていくわけです。

 

泰山に至っては、還暦も近いおじさんから大学生に戻るのはさぞ嬉しいだろうなと思いつつ読んでました。

泰山はそもそも女性が好きなので、若い女性がいるパーティなどは喜んで出かけていったりする描写もあります。

 

そんな中で、二人は入れ替わった謎を追いかけていくことになります。

 

それをサポートする、泰山の盟友である官房長官である狩屋や、有能な秘書貝原、翔の友人等のキャラが立っています。

 

ちなみに、泰山は狩屋のことを「カリヤン」と呼び、狩屋は泰山のことを「泰ちゃん」と呼んでたりします。

 

実際の、固いイメージのある政治家もそんな風に親し気に呼びあったり、作中にあるようにクラブの女性がどうだとか、中学生レベルのしょうもない話をしたりしているのかなぁと思ったりしました。

 

二人が入れ替わり、支持率や政党の利益のことばかり気にしていた泰山は、翔の真っ直ぐな気持ちや情熱に触れて、若いころの国を良くしようと本気で考えた頃の情熱を取り戻していったり、翔は翔で父親の立派な姿も見ていくことになります。

 

笑い成分も多いですが、熱い小説でもあります。

 

私は政治に興味はそれほどないのですが、この小説を読んでかなり身近になりました。

単純に楽しく読めたのに加えて、そういう意味でも読んで良かったです。

 

【感想】新海誠『小説 秒速5センチメートル』 -小学校で出会った2人 切ない初恋-

こんにちは。こなびすです。

 

新海誠さんの「小説 秒速5センチメートル」の感想を書きます。

君の名はのアニメ映画で新海誠さんを知り、かつての作品も気になり小説版を買ってみました。純粋であまりに繊細な恋心に心が揺さぶられます。

 

この小説は、小学生~中学時代、高校時代、就職後についての3編で構成されています。

 

 

内容(「BOOK」データベースより) 


「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った2人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく―。劇場アニメーション『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、新海誠監督みずからが繊細な筆致で小説化。1人の少年を軸に描かれる、3つの連作短編を収録する。

 

 

感想

いきなりどうでもいいのですが、私も初恋が小学生の時だったので、その時の純粋な気持ちを思い出しました・・・。

 

ちなみに、本作のアニメ版は観ていないのですが、かなり観たい気持ちが強くなりました。

 

この小説も面白くて一気読みしてしまいました。なので、アニメ版も間違いなく面白いと思うからです。

 

どんな風に映像化されているのか非常に気になっています。

 

この小説版だけでも印象的で綺麗なシーンがたくさんありました。

画像のこの本のカバーのイラストもかなり好きです。小学生時代の2人が桜並木の下を手を繋いで歩いているっていう。

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なんか読み終わった後だと、この表紙を観ると泣きそうになります。

 

貴樹と明里の純粋な気持ちに心が打たれます。そして、それほどまでに想い合っている二人ですが、親の都合で引っ越さねばならず離ればなれになってしまいます。

 

で、二人とも勿論少しずつ大人になっていくのですが、あまりに大きな出会いだったため、大人になるまでの間だけでなく、大人になってからも、かつての想いを胸の底に秘めたまま時を過ごしていきます。

 

個人的には2話目の「コスモナウト」が好きでした。

舞台は貴樹が引っ越した先のとある島に移ります。

 

2話の主人公は前述の2人とは全く別の、澄田花苗という女子高生です。

彼女は同級生の貴樹に片思いをしています。

 

切ないんです。彼女の真っ直ぐな気持ちが。

 

学校の帰りに貴樹を待ち伏せしたりして、客観的には若干重めなんじゃないかと思わないでもないですが、それくらい貴樹のことが好きなんです。

 

そして貴樹は彼女の気持ちには気づいているけど、、、って感じです。

 

花苗の恋が実って欲しいと願わずにはいられないくらい、真っ直ぐで綺麗な恋心に胸を打たれました。

 

二人で一緒に帰っているシーンとかもあるんですが、青春です。

甘酸っぱいです。

 

青春系、恋愛の小説が好きな人はきっと好きだと思います。

 

若いっていいなぁ、そして、恋愛もやはりいいなと改めて思わせてくれたとても良い小説でした。

 

【感想】芦沢央『許されようとは思いません』 -読み応えがあるミステリー短編集-  

こんにちは。こなびすです。

 

芦沢央さんの「許されようとは思いません」の感想を書きます。

5編からなるミステリーの短編集ですが、どれも完成度が高く読み応えがありました。

 

短編集については、全ての話について感想書ければいいのですが、やはり印象に濃淡がありますので、最も印象に残った「姉のように」について書きたいと思います。

 

 

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内容(「BOOK」データベースより)

 「これでおまえも一人前だな」入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。だが売上伝票を見返して全身が強張る。本来の注文の11倍もの誤受注をしていた―。躍進中の子役とその祖母、凄惨な運命を作品に刻む画家、姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のため寒村を訪れた青年。人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。

 

感想

「姉のように」は、姉が罪を犯し、妹である主人公が、娘を虐待してしまう話です。

 

姉が罪を犯したことで、何がどうなって娘を虐待するに至ったかについて簡単に書きます。

 

1.姉が子供に絡む犯罪を犯す。

2.主人公は姉を心の拠り所としていたため、自分も子供に対して同様のことをしてしまうのではないかと怯える。

 3.周囲からは犯罪者の身内であると冷たい目で見られ、夫は、子が犯罪者の姪となってしまったことで不安になる。

4.子供は3歳という苦労する年頃であることからストレスも溜まり、誰にも相談できず精神的に追い込まれていく。

 

 

そんな状況の中で、癇癪を起す娘についに手を上げてしまいます。

 

娘のことは愛しているにも関わらずです。

 

自分で自分を止められないという状況です。

 

働きに出て、娘を保育所に預けようとしたり、少しでも娘の接点を無くそうとまで努力しますが、周りがそれすらも許さず、徐々に追い込まれていきます。

 

精神的に追い込まれていく過程や、虐待したいわけでもないのに娘に虐待をしてしまう際の感情の描写がリアル過ぎて読んでいて辛かったです。

 

また、私には子供はいませんが、彼女のようになったらどうしようという不安も植え付けられるくらいに本当にリアルでした。

 

意思に反して、我が子を虐待してしまう。

 

現実にもそういう状況の人はいるのだと思うと、母親も子供も不憫で胸が痛みます。

 

結果だけを見ると、明らかに虐待をする親が悪いのですが、状況に追い詰められることでそのような結果になることもあるのだな、と痛切に感じました。

 

また、この話にもどんでん返し的な仕掛けもあり、足元をすくわれると思います。

 

ただ、個人的には、その仕掛けが無くても良かったと思うくらい短編ながら濃い内容でした。

 

ミステリー好きな方にはおススメできます。