【感想】芦沢央『許されようとは思いません』 -読み応えがあるミステリー短編集-
こんにちは。こなびすです。
芦沢央さんの「許されようとは思いません」の感想を書きます。
5編からなるミステリーの短編集ですが、どれも完成度が高く読み応えがありました。
短編集については、全ての話について感想書ければいいのですが、やはり印象に濃淡がありますので、最も印象に残った「姉のように」について書きたいと思います。
内容(「BOOK」データベースより)
「これでおまえも一人前だな」入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。だが売上伝票を見返して全身が強張る。本来の注文の11倍もの誤受注をしていた―。躍進中の子役とその祖母、凄惨な運命を作品に刻む画家、姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のため寒村を訪れた青年。人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。
感想
「姉のように」は、姉が罪を犯し、妹である主人公が、娘を虐待してしまう話です。
姉が罪を犯したことで、何がどうなって娘を虐待するに至ったかについて簡単に書きます。
1.姉が子供に絡む犯罪を犯す。
2.主人公は姉を心の拠り所としていたため、自分も子供に対して同様のことをしてしまうのではないかと怯える。
3.周囲からは犯罪者の身内であると冷たい目で見られ、夫は、子が犯罪者の姪となってしまったことで不安になる。
4.子供は3歳という苦労する年頃であることからストレスも溜まり、誰にも相談できず精神的に追い込まれていく。
そんな状況の中で、癇癪を起す娘についに手を上げてしまいます。
娘のことは愛しているにも関わらずです。
自分で自分を止められないという状況です。
働きに出て、娘を保育所に預けようとしたり、少しでも娘の接点を無くそうとまで努力しますが、周りがそれすらも許さず、徐々に追い込まれていきます。
精神的に追い込まれていく過程や、虐待したいわけでもないのに娘に虐待をしてしまう際の感情の描写がリアル過ぎて読んでいて辛かったです。
また、私には子供はいませんが、彼女のようになったらどうしようという不安も植え付けられるくらいに本当にリアルでした。
意思に反して、我が子を虐待してしまう。
現実にもそういう状況の人はいるのだと思うと、母親も子供も不憫で胸が痛みます。
結果だけを見ると、明らかに虐待をする親が悪いのですが、状況に追い詰められることでそのような結果になることもあるのだな、と痛切に感じました。
また、この話にもどんでん返し的な仕掛けもあり、足元をすくわれると思います。
ただ、個人的には、その仕掛けが無くても良かったと思うくらい短編ながら濃い内容でした。
ミステリー好きな方にはおススメできます。